テレビ連続ドラマ 『台湾水利先駆者八田與一と外代樹夫妻』10 - Fiction, Screenplays - udn部落格
Fiction, Screenplays
作家:掌鏡人影視文創工作室
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    テレビ連続ドラマ 『台湾水利先駆者八田與一と外代樹夫妻』10
    2026/06/04 19:29:51
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    テレビ連続ドラマ
    『台湾水利先駆者八田與一と外代樹夫妻』10

    【第九回】


    1、夜の場面

    時:大正六年十一月中旬のある夜
    景:台北西門町・林太太の家の客間
    人:林信義、羅満妹、米雅

    夜、満妹の家の客間にて。

    満妹:(台湾語)「信義、あなたたちの荷物は全部準備できた?」
    信義:(台湾語)「うん、準備できた。」
    満妹:(台湾語)「外出先では二人で互いに面倒を見合いなさい。生活費は使うべき時に使いなさい。」
    信義:(台湾語)「分かったよ。」
    満妹:(台湾語)「米雅、母はあなたに特別な要求はしないわ。信義と何でも相談して、けんかしないようにね。」
    米雅:(台湾語)「お母さん、分かりました。」
    満妹:(台湾語)「学校の休みには、二人で一緒に帰って来なさい。」
    信義:(台湾語)「はい。」


    2、昼の場面

    時:十一月下旬のある午後
    景:東京工業大学・広井勇の宿舎
    人:八田與一、外代樹、林信義、米雅、広井勇

    広井勇の宿舎にて。

    広井:「與一、君の手紙を受け取ったよ。人を連れて来ると言っていたが、この若者のことだね?」
    與一:「はい、先生。この者が林信義で、隣がその婚約者です。」
    林信義:「先生、どうぞよろしくお願いします。」
    広井:「ここには空き部屋があるから、二人はまずそこに住みなさい。誰か話し相手がいれば退屈もしないだろう。」
    林信義:「先生、私と米雅は家事を手伝います。洗濯や炊事もします。」
    広井:「洗濯や炊事は不要だ。私がいない時に家を見てくれればそれでいい。與一、君たちはまだ金沢へ戻るのか?」
    與一:「はい。信一とその婚約者が金沢で結婚式を挙げますので、妻と一緒に戻って手伝います。」
    広井:「時期が近くなったら、招待状を送ってくれ。私は信一の結婚式に必ず出席しよう。」
    與一:「はい、先生。」


    3、昼の場面

    時:十一月下旬のある午後
    景:石川県金沢市・米村家の客間
    人:米村吉太郎、米村琴、秀子、林信義

    米村家の客間にて。

    吉太郎:「秀子、君の姉と義兄はどうして一緒に帰って来なかったのか?」
    秀子:「義兄は台湾の部下の林信義とその婚約者を連れて東京へ行き、恩師の広井教授に会わせて預けました。姉と義兄はすぐ金沢に戻ります。」
    米村琴:「結婚式をここで挙げて、そのまま新年も過ごすとは、家が一気ににぎやかになるね。」
    秀子:「はい、叔母さん。親戚や友人も結婚式に参加できますから。」
    吉太郎:「では、市内に出て写真撮影と礼服の仕立てをしておきなさい。残りは私たちが準備しておく。」
    信一:「叔父さん、叔母さん、いろいろとお気遣いありがとうございます。」


    4、昼の場面

    時:十一月下旬のある午前
    景:石川県金沢市の商店街
    人:秀子、林信義、八田與一、外代樹

    金沢市の商店街にて。

    與一:「私は信一と礼服を注文しに行く。30分後に前の写真館で合流しよう。」
    秀子:「お義兄さん、お願いします。」

    與一と信一は洋服店へ入る。

    與一:「結婚用の礼服を注文したい。」
    店主:「どなたが着用されますか?」
    與一:(指して)「この者です。まず採寸して、その後に布地とデザインを選んでください。」
    店主:「礼服は和式と洋式があります。最近は両方作る方が多いですよ。」
    信一:「では両方お願いします。」
    店主:「分かりました。採寸いたしますので奥へどうぞ。」

    信一は採寸される。與一は布地を選ぶ。

    與一:「信一、まず布地を選びなさい。」
    信一:「はい、義兄さん。」

    その後、四人は写真館へ。

    與一:「結婚写真の予約をします。」
    店主:「どちらの新郎新婦でしょうか?」

    與一が二人を前へ出す。

    與一:「この二人です。」
    店主:「室内撮影と屋外撮影がありますが、両方必要ですか?」
    與一:「両方お願いします。私は三ヶ月前にも妻と撮影しましたので、覚えているでしょう。」
    店主:(微笑)「思い出しました。八田ご夫妻ですね。」

    與一:「信一、秀子、屋外撮影の場所は今のうちに予約しておく必要があります。」
    信一:「秀子、どこにする?」
    秀子:「茶屋街、旧市街、兼六園がいいと思います。」
    店主:「その程度なら一日で撮影可能です。馬車を用意しますので、当日は朝に来てください。化粧には1~2時間かかります。」


    5、昼の場面

    時:大正六年十一月下旬のある午前
    景:満妹の菜園
    人:羅満妹、阿操、郭水生、陳来成、孤児院の子供三人、安妮修女

    菜園にて収穫作業。

    阿操:「今日はヘチマ半籠、ヒョウタン半籠、水生兄さんは向こうでサツマイモを掘って半籠ね。残りは野菜で半籠。」
    満妹:「分けて収穫するの。1週間分ずつで十分、取りすぎないようにするの。」
    水生:「分かったよ、林太太。」
    来成:「阿操姉さんの野菜、とてもおいしいよ。」
    阿操:「じゃあ全部食べなさい。」
    来成:「うん、安妮修女の料理はいつも残らないよ。」
    安妮:「ちょうど良い量にしているからね。」
    水生:「この菜園のおかげで孤児院の食費が三分の一も減りましたよ。」
    満妹:「私は主婦だから、収入が限られている中でやりくりしないといけないの。」
    水生:「包子屋の経営と同じですね。」


    6、昼の場面

    時:十一月下旬のある午前
    景:台北総督府官舎・阿部貞壽の宿舎
    人:「塩水港」社長荒井泰治、部長大原二郎、阿部貞壽

    玄関のベルが鳴り、阿部が応対する。

    阿部:「どちら様でしょうか?」
    大原:(名刺を出す)「塩水港製糖会社台北営業所部長の大原です。」
    阿部:「ご用件は?」
    大原:「荒井社長があなたと直接お話ししたいとのことで、まず中へ入れていただけますか。」
    阿部:「どうぞ。」

    客間へ案内する。

    阿部:「どうぞお座りください。単身宿舎で片付いておらず失礼します。」
    大原:「気にしません。」
    阿部:「お茶を用意します。」

    茶を出す。

    阿部:「どうぞ。」
    大原:「これは心ばかりの果物です。」

    机に置く。

    大原:「総督府の嘉南平原水利計画について、社長たちは強い懸念を持っています。八田技師長と直接会談をお願いしたいのです。」
    阿部:「その件ですね。」
    阿部は説明する。計画の経緯、評価中であることを述べる。
    荒井:「その話はすでに聞いています。」
    阿部:「そうでしたか。」
    阿部はさらに説明し、まだ未確定であることを述べる。

    荒井:「我々は生計のため準備が必要です。」
    阿部:「技師長が戻り次第、面会を調整します。」
    大原:「お願いします。」

    退室後、阿部は贈り物を開け、果物の下に紙幣を発見する。慌てて追うが、すでに人力車で去っている。


    7、昼の場面

    時:十一月下旬のある午前
    景:東茶屋街・西茶屋街・金沢城・兼六園
    人:八田與一、外代樹、林信義、秀子、写真師、化粧師、助手

    各地で婚礼写真撮影。

    與一:「女性が一生で最も美しい時は二度ある。」
    信一:「今と、もう一つですか?」
    與一:「そうだ。もう一つは?」
    信一:「分かりません。」
    與一:「初めて母となり、赤子に授乳する時だ。」
    信一:「確かに美しいですね。」

    写真師:「新郎、準備してください。」
    信一:「はい。」

    外代樹:「秀子、顔の力を抜いて。」

    霞ヶ池の対岸で女性が見つめている。


    8、昼の場面

    時:十一月下旬のある午前
    景:満妹の家の台所
    人:羅満妹、阿操、郭水生

    寿司作りの練習。

    阿操:「米は2時間浸水し、柔らかく炊き、温度が手より少し低い時に海苔に広げる。」
    水生:「なるほど。」
    阿操:「具を中央に置き、巻く。」
    満妹:「水生、寿司を覚えれば包子屋でも売れる。」
    水生:「孤児院のためです。」
    満妹:「阿操と結婚したら?」
    水生:「阿操次第です。」
    阿操:「まだ告白していないでしょう。」


    9、昼の場面

    時:大正七年十一月上旬のある午前
    景:台北総督府民政長官室
    人:下村宏、山形要助

    計画書が机に置かれている。

    下村:「よくできている。」
    山形:「龜重溪と官佃溪にそれぞれ建設する計画です。」
    下村:「予算的に難しい。」
    山形:「嘉義は急流が枯れるため必要です。」
    下村:「統合できないか?」
    山形:「検討します。」
    下村:「高雄と呼ぶのはどうか。」
    山形:「良い名前です。」


    10、昼の場面

    時:大正七年十一月上旬のある午前
    景:台北総督府土木局長室
    人:山形要助

    机上に果物箱。

    山形:「阿部技師、あなたは間違った判断をした。」
    阿部:「申し訳ありません。」
    山形:「贈収賄の可能性がある。」
    阿部:「事実です。」
    山形:「だが評価はする。」
    山形:「面会は認める。」
    阿部:「はい。」
    山形:「休暇に入れ。」
    阿部:「はい。」

    11、日シーン

    時:十一月下旬のある午後

    景:石川県金沢市郊外の海岸塩性地

    人:米村吉太郎、八田与一、徳川執事

    市郊外の米村家の海岸塩性地。

    吉太郎:「与一、見てごらん、防風林が植えられて、水たまりも排除された。」

    与一:「岳父、この土地はまだ二年間の土質改良が必要です。」

    吉太郎:「そうだな。お前の言いつけ通り、小作人たちにまず牧草を植えさせた。この土地の半分は、お前と外代樹の名義で登記してある。将来お前たちの子供が使うことになるだろう。」

    与一:「そのお気持ちは与一も理解しております。しかし私は長く台湾に滞在しており、自ら耕作する機会もありません。」

    徳川:「八田婿殿、いずれはご退職なさるでしょう。旦那様も先にお考えになっておりますよ。」

    12、夜シーン

    時:十二月上旬のある夜

    景:石川県金沢市河北郡今村町、八田の本家

    人:八田与一、外代樹、八田誠一(長兄)、八田春子、八田又五郎(次兄)、八田智証(三兄)、八田由紀子、八田理恵(長兄の娘)、八田有志(長兄の息子)

    金沢市河北郡今村町、八田本家の客間にて、一家が囲炉裏を囲み、窓の外には雪が舞っている。

    智証:「五弟よ、母上はお前が嫁を連れて年末に帰って来ると聞いて、とても喜び、大嫂に髪を染めさせているんだ。」

    与一:「母上、私は長年外で働き、ほとんど帰省してお正月を共にできず、不孝でございます。」

    春子:「与一、そんなふうに思う必要はありません。皆それぞれ成長し、それぞれの空の下で働くことの方が大切です。帰省より仕事の方が重要ですよ。」

    誠一:「五弟よ、母は口ではそう言っているが、本当に一番気にかけているのはお前だ。お前が一番遠くにいるからだ。」

    与一:「はい、それは分かっております。」

    由紀子:「五妹よ、食卓の料理は好きなものを自由に取ってね。」

    外代樹:「はい、お義姉様。」

    与一:「有志と理恵、叔父さんが東京を通ったとき、輸入チョコレートを二箱買ってきた。あとで私のところに来なさい。」

    有志と理恵が声をそろえて:「ありがとうございます、叔父さん。」

    誠一:「そうだ。兼六園の主、前田正行藩主から数日前に書状が届き、用事を頼みたいと言っている。行ってきてくれ。理恵、その手紙を五叔父に持っていきなさい。」

    理恵:「はい、すぐに。」

    理恵が手紙を持ってくる。「叔父さん、お手紙です。」

    与一が招待状を開く。

    外代樹:「何の用事なの?」

    与一:「前田藩主が、兼六園の曲水の排水路を再設計してほしいとのことだ。」

    外代樹:「休暇に影響しないの?」

    与一:「それほど時間はかからないだろう。明日、前田藩主の邸宅へ行ってくる。」

    13、日シーン

    時:大正六年十二月上旬のある午前

    景:石川県金沢市、前田藩主邸宅

    人:藩主前田正行、総管利沢泰山(65歳)、前田秋美、武士数名

    八田与一は前田正行の邸宅に到着し、門番の通報を経て客間に通される。

    正行:「お前が八田与一か?」

    与一:「はい。」

    正行:「この前、私の護衛たちが茶屋街でお前に乱暴を働いた件、三人にはすでに処罰を与えた。お前の兄は追及しないと言ったが、今日は直接謝罪したい。許してほしい。」

    与一:「前田藩主、その件はもうほとんど忘れております。」

    正行:「私の姪・前田秋美が、兼六園の曲水の水路について意見を持っている。彼女はお前をこの分野の専門家であり、尊敬する先輩だと言い、私に紹介した。」

    与一:(微笑)「それは秋美さんのご提案でしたか。彼女は見識ある才女ですね。」

    その時、前田秋美が奥から現れ、微笑んで一礼する。

    秋美:「与一先輩、ありがとうございます。」

    与一:(驚き)「秋美、君か!」

    秋美:「京都でお別れして以来、あなたが結婚したと聞きました。」

    与一:(困惑)「はい、そうです。」

    正行:「八田与一、姪とともに兼六園へ行ってくれ。利沢執事が同行する。」

    利沢:「はい、八田少爷、小姐、どうぞ門前で人力車にお乗りください。」

    二人はそれぞれ人力車に乗り、利沢の先導で兼六園へ向かう。

    14、日シーン

    時:大正六年八月下旬のある午前

    景:石川県金沢市、兼六園「曲水」「三芳庵」

    人:総管利沢泰山(65歳)、前田秋美、八田与一、遊客

    秋美が与一を連れ、曲水沿いの歩道を歩く。利沢は距離を置いて後ろをついていく。空には雪が舞っている。

    秋美:「先輩、米村さんはあなたに良くしてくれますか?」

    与一:「とても良いですよ。」

    秋美:「結婚後、彼女はもうお嬢様のような気性を出していませんか?」

    与一:(笑)「もうありませんよ。」

    秋美:「こんな遠回りをしてあなたに会うことを許して。新婚のあなたに迷惑をかけたくなかったの。」

    与一:(笑)「確かに大きな遠回りですね。」

    秋美:「三芳庵で温かいコーヒーを飲みませんか?」

    与一:「コーヒー?」

    秋美:「ええ、京都の家から持ってきたの。最近は三芳庵に住んでいて、昼は写生、夜は小説を書いているの。前にあなたと奥さんが友人と婚礼写真を撮りに来たとき、偶然あなた方を見かけたの。」

    二人は三芳庵へ歩いて行く。利沢は入口外の木の下に残る。

    秋美:「先輩、ここに座ってください。コーヒーを淹れてきます。」

    秋美がコーヒーを二杯持ってくる。二人は窓際に座る。

    秋美:「兼六園の雪景色が好きで、この数年の冬はここで過ごしています。正月が過ぎたら台湾に戻るの?」

    与一:「はい、まだ多くの仕事があります。」

    秋美:「やはりあなたは台湾から離れられないのですね。」

    与一:「はい、台湾はとても好きです。」

    秋美:「奥様はその環境に慣れていますか?」

    与一:「彼女は……あちらで多くの友人ができました。秀子と一緒に孤児院でボランティアとして教えており、毎日とても忙しく充実しています。」

    秋美:「ここには、あなたの奥様と秀子さんも来たことがありますね。結婚前に。」

    与一:(好奇心)「え?外代樹がここに?」

    秋美:「覚えていますか?米村さんが私たちの関係を誤解したとき、私は彼女をここに呼び、直接説明しました。」

    与一:「そうでしたか。ありがとうございます、後輩よ。」

    秋美:「先輩、結婚式に私は出席できず残念でした。もしよければ、あなた方と藏成先輩たちをここに招いて、食事をしてもらえませんか?」

    与一:「いいですよ。外代樹にもあなたともっと親しくしてほしいです。そうすれば彼女も不安にならないでしょう。」

    秋美:(心の声)「先輩、あなたは本当に幸せなのですか。今のあなたを見る限り、答えはきっと肯定なのでしょう。」

    15、日シーン

    時:大正六年八月下旬のある午前

    景:金沢市東茶屋街志摩茶屋の露天席

    人:八田与一、藏成信一、外代樹、秀子、河野洋平、芸妓、通行人

    与一家と信一家が志摩茶屋の露天席でお茶を飲んでいる。秀子が河野少爷が芸妓を抱いて通るのを見る。

    秀子:「姉さん、あれは河野少爷じゃない?」

    外代樹:「そうね、あの人は本当に風流な性格だわ。」

    信一:「何を見ているんだ?」

    秀子:「河野家の坊ちゃんよ。」

    信一:(首を振る)「街中で芸妓を抱くなんて、あまりにも派手すぎるな……

    秀子:「どう?うらやましいの?」

    信一:「まさか、妻よ。」

    秀子:「姉さん、やっぱり私たちは早く彼の本性を見抜いて正解だったわね。」

    外代樹:(与一を見ながら)「そうね。男が風流を気取れば、女は苦労するものよ。」

    与一:「私には関係ない。そんな目で見るな。」

    信一:「小姉さん、安心して。義兄はそんなことしないよ。」

    与一:「前田さんが兼六園の三芳庵に招待してくれた。」

    外代樹:(疑い)「前田秋美?また会ったの?」

    与一:「違うよ、偶然そこで会ったんだ。」

    外代樹:(疑い)「何のために?」

    与一:「結婚式に出席できなかったから、残念だったと言っていた。」

    外代樹:「私には、私たちの結婚生活を確かめたいだけに見えるわ。」

    信一:「考えすぎだよ。」

    秀子:「今は黙ってなさい。」

    信一:(むくれる)「はいはい。」

    外代樹:「行きましょう。その前田さんが何を考えているのか見てやるわ。」

    与一:(苦笑)「何かあるわけないだろう……

    16、日シーン

    時:大正六年八月下旬のある午前

    景:石川県金沢市兼六園「曲水」「三芳庵」

    人:総管利沢泰山(65歳)、前田秋美、八田与一、外代樹、信一、秀子、女中数名、遊人

    利沢総管が与一一行を率いて三芳庵の門前に到着する。

    利沢:「お嬢様、八田様と藏成少爷、ご家族の皆様をお連れいたしました。」

    前田秋美が数人の女中を連れて門前に出迎える。

    秋美:「利沢総管、お疲れさま。まず女中に茶と菓子を用意させて、二刻後に食事を始めてください。」

    利沢:(礼をして)「はい、老僕は準備に向かいます。」

    秀子:(信一の袖を引き、小声で)「わあ、すごいおもてなしね!」

    信一:(指を口に当て)「しっ、静かに。」

    秋美:「先輩方と奥様方、どうぞお入りください。」

    二組の夫婦が入室すると、すぐに紫檀の粉が燃える香の香りが漂う。

    秋美:「先輩方と奥様方、どうぞお座りください。まずは軽い茶菓子を。」

    着席後、女中が茶菓子を数品運ぶ。

    秋美:「ここは私の仕事場で、在宅時は一般公開していません。」

    与一:「軽い食事だと思っていましたが、前田小姐はとても丁寧に準備されましたね。」

    秋美:「二人の先輩方と奥様方をお招きできるのは、秋美の光栄です。」

    外代樹:「前田小姐、率直に申し上げます。これほど大げさに招かれたのは、単なる旧交のためだけではないのでは?」

    秋美:「ただの旧交です。奥様は気になさらず、どうぞお召し上がりください。」

    秋美は表情を崩さず、静かに与一と外代樹を観察する。

    秋美:「奥様、与一先輩と異郷で暮らして、いかがですか。」

    外代樹:「初めて台湾に来ましたが、とても親しみを感じて、いつの間にか生活に溶け込んでいました。」

    秋美:「奥様の感覚は与一先輩と同じですね。なるほど……

    外代樹:「それだけではなく、与一は本当に自分の専門を生かして、その土地の建設に尽くそうとしているのです。」

    秋美:「……そうですか。理解できます。」

    秋美:(OS)「悔しい気持ちはあるけれど、この二人の自然な調和を見ると、もう先輩は手放すべきなのだわ。」

    秋美:「そうだわ。まだ信一先輩と秀子奥様にお祝いを申し上げていませんでした。贈り物を用意しております。」

    利沢総管が贈り物を持って秋美の前へ運び、秋美はそれを信一の前へ渡すよう指示する。

    信一:「後輩、気を遣わなくていいのに。」

    秀子:「そうよ。」

    秋美:「いいえ、ご結婚は大事なことですから当然です。」

    秋美:「与一先輩の結婚式に出席できなかったのは残念でした。どうかお受け取りください。」

    信一:「ではありがたくいただきます。」

    秋美:「こちらは与一先輩と奥様への贈り物です。」

    今度は利沢が直接与一の前に贈り物を置く。

    外代樹は驚く。

    与一:「後輩、そこまで気を遣わなくていいですよ。」

    秋美:「どうかお受け取りください。私の気持ちです。開けてみてください。」

    外代樹が与一を見ると、与一がうなずき、開封を促す。

    外代樹:「ではありがたく頂戴します。」

    開けると、精巧な金製の子供用の飾り(金の小さな首飾り)が入っている。

    外代樹:「秋美、これ……

    秋美:「お二人の未来のお子さんへの贈り物です。」

    外代樹:(OS)「秋美さんは本当に分別のある立派な女性ね……私のわがままで、この人を失わなくてよかったのかもしれない。」

    外代樹は秋美の真心の祝福を感じる。

    17、日シーン

    時:大正六年八月下旬のある午前

    景:金沢市・米村家の庭

    人:八田与一、藏成信一、外代樹、秀子、米村吉太郎、米村琴、米村健治(兄・24歳)、宮澤真子(姉・20歳)

    米村家の庭で、一家が桜の木の下に座り茶菓子を食べている。

    米村琴:「次にあなたたちが帰ってくるのは、いったいいつになるのでしょうね。」

    外代樹:「母上、娘として不孝で、なかなかお側にいられません。」

    真子:「妹よ、これがあなたの選んだ道です。姉としてはただ、体に気をつけて、休暇があれば帰ってきなさいとしか言えません。」

    吉太郎:「与一、信一、台湾での仕事は順調か?」

    信一:「叔父さん、史上初の水利工事の仕事を任されました。」

    吉太郎:「それは良いことだ。思い切り力を発揮しなさい。」

    与一:「父上、励ましありがとうございます。」

    吉太郎:「男は四方に志を持つものだ。事業のためには遠くへ行くことも必要だ。」

    健治:「そうだな、義弟よ。私も高校卒業後は東京で医学を学び、そこで開業するつもりだ。」

    米村琴:「皆それぞれ嫁いだり仕事に行ったりして、家には私たち年寄りだけ。静かで寂しいものだよ。」

    秀子:「叔母様、台湾でも同じですよ。昼は与一や信一が仕事で、家は静かです。でも自分で何かを見つければ時間は過ぎます。」

    吉太郎:「その通りだ。村の老人会でも舞踊や編み物や絵画など色々あるのに、行かないのはもったいない。」

    外代樹:「母上、新しい友達を作るのも良いことです。気晴らしにもなります。」

    吉太郎:「心配はいらない。お前たちは仕事に専念しなさい。親と一緒にいて何も成し遂げないより、それぞれ飛び立つ方が良い。」

    18、日シーン

    時:大正七年一月下旬のある午前

    景:台北総督府土木局長室

    人:山形要助局長、内務省技監原田貞介(42歳)

    山形:「原田技監、今回の調査の重点は濁水渓・急水渓・曾文渓で、八田技師の提案した龜重渓と官佃渓への二水庫建設の必要性、さらに代替案の有無を評価してほしい。」

    原田:「山形局長、八田技師の二系統灌漑案は予算上実現困難ですが、専門的に見れば、将来的に予算が許すなら急水渓かその支流龜重渓に水庫を建設しなければ、嘉義の水不足は根本解決できません。」

    山形:「よく分かった。水利課から技師を数名選び、瓦歴斯・貝林に案内させよう。彼は八田と同行した経験があり、地形に詳しい。」

    原田:「局長、調査後には八田技師と直接意見交換したいと思います。」

    山形:「もちろんだ。報告後、下村長官も交えて議論の場を設ける。」

    19、日シーン

    時:大正七年一月下旬のある午前

    景:台北総督府土木局長室

    人:山形要助局長、八田与一

    山形:「八田技師長、君の調査報告と計画書は下村長官と一緒に検討した。」

    与一:「局長、下村長官は何と?」

    山形:「要点は二つだ。一つは現予算では二つの水庫と灌漑システムを同時に負担できないこと。もう一つは、水源の豊かな官佃渓を主水源とし、嘉義と台南の送水路を連結する案だ。」

    与一:「なるほど……それでは相賀庁長の希望は満たしにくいですね。」

    山形:「やむを得ない。別の方法で限られた水資源を最大限に活用する方法を考えてくれ。」

    与一:「分かりました。」

    山形:「内務省技監の原田貞介が現地調査に行く。帰還後、君と原田の意見交換の場を設ける。下村長官も出席する。」

    与一:「はい。」

    山形:「下村長官は君の計画を支持している。ただし修正が必要だと言っている。落胆するな。」

    与一:「はい。」

    20、黄昏シーン

    時:大正七年一月下旬のある夕方

    景:台北総督府土木局水利課事務室

    人:八田与一、藏成信一、阿部貞寿

    水利課事務室で与一は嘉南平原の水路図を見つめている。阿部と信一が入ってくる。

    阿部:「悩んでいるのか、技師長。もう退勤の時間だ。」

    与一:「ああ、局長と計画の修正について話したところだ。」

    信一:「何を言われた?」

    与一:「二系統の灌漑計画を修正せよとのことだ。」

    阿部:「どう修正するんです?」

    与一:「官佃渓の水庫は残し、嘉義と台南の送水路を連結する。」

    阿部:(驚き)「それでは水量が全く足りないではないか。十一万甲の農地だぞ!」

    与一:「限られた水源で最大限の面積を灌漑せよというのが下村長官の考えだ。」

    信一:「それは難題だな。」

    与一:「今日は我が家で夕食にしよう。そこで話し合おう。」

    阿部:「いいですね、喜んで行きます。」

     

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